犬っ子ろはうるさい。
騒がしい。うっと惜しい…。
でも、可愛いから…手放せない。











's















宿舎。
全国から代表チームが自分自身の力を試す為に集まる。














合宿中の選抜メンバー。
広い宿舎内を駆け回る人物が一人。
天才エースストライカーとも呼ばれる少年。
だが、本人にいったっては自分が天才という気は全くなく、
人当たりもいいため敵は居ない。
そんな彼でも尊敬する人はいる。
尊敬する人は、今彼の傍には居なかった。
行方を求め選抜宿舎をさまよう。
廊下をきょろきょろと走っていく。













合宿中の選抜メンバー。
広い宿舎内を駆け回る人物が一人。
そのたくまいなる勘の鋭さを変われた少年。
高い身長はどこに居ても存在を目だたてた。
天然を地で行く性格は周りの人たちに好印象を与えている。
そんな彼でも尊敬する人はいる。
尊敬する人は、今彼の傍には居なかった。
行方を求め選抜宿舎をさまよう。
廊下をきょろきょろと走っていく。


















そんな二人がぶつかるのは当然のことであり…




















「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!」






















思いっきりいい音と叫び声。
宿舎中に響いたがこの二人の声だった為に、誰も気にはしなかった。
ほぼ全員が「…また何かやったのか…。」と心理は同じだったが、
誰も確認しようとまでは思わなかった。











「いたったぁ。」
二人して同時にしゃがみこむ。
自分自身の頭を抑えてしばらくうなると、
ぶつかった相手を見ようと顔を上げる。
「あ…確か九州選抜の…。」
先に声を上げたのはエースストライカーであった。
他人の評価ほど彼の頭は馬鹿ではなかった。
選抜メンバーの主な名前などほとんど覚えている。
特に自分と同じくらいの力を持つ選手は…。
「高山昭栄たい。あんたは?」
「俺は藤代誠二。ごめんな。
 ぶつかって悪いけど…急いでるから!!」
そういって走り出そうとするが、
勢いよく顔面からダイブする。
今度は痛い顔を少し怒りを込めつつ起き上がる。
転んだのは、高山が藤代の洋服のすそを引っ張った為である。
「な…何するんだ…。」
「こんなに急いでどないしたと?」
まぁ長い選抜の夜のんびりといこうや。
東京もんはせっかちでしょうがない。
のんびりとした声で言われては怒る気もうせてくる。
「キャプ…じゃなくて渋沢さんを探してるんだけど…?見なかった?」
「渋沢さん?」
どこかで聞いた事のある名前だと高山は考える。
確か誰かがよく言っていた名前。
あれは…自分の憧れの人。
「…一さんなら知ってるかも…。」
「本当か?で、その一さんってどこにいるんだ。」
期待の藤代の声は一瞬に落胆の声に変わる。
「実は俺も探してたとよ。」
にっこりと悪意のない笑み付きで言われると文句の一つもだせなくなってしまった。
「あ…そ…そうなんだ。」
今ので一気に落胆し体の力が抜けた藤代は座り込む。
まぁ、藤代に会話を続ける気力もすでになかったが…。
「でも、一さんGKの所にいるゆうてたから、
 もしかしたら一緒にいるとよ?」
一さん…GK…。
確か渋沢さんにいつも突っかかってる人。
今思い出したけど、そんな名前だった気がする。
「だな…。一緒にいってみようぜ。」
「よかと。先は急げばい。」
がしっと二人は腕を重ねると、一緒になって走りだした。
騒ぎを聞きつけ、一応確認に来た制止の声を振り切って。
































夜のグラウンドはあまり人がいなかった。
練習場にはグランドに数人の姿が見えるだけである。
二人が探している二人はゴールポストの傍にいた。
「そういえば…小耳にはさんだけど犬を飼ってるんだって?」
グローブをはずしながら渋沢は功刀に話しかける。
「誰に聞いたと?」
少し怒りながら功刀は答えるが、渋沢はおくさない。
これくらいでひるんではとても東京選抜のキャプテンは務まらない。
「いや…別に誰と特定はできないんだが…。」
ただ噂で聞いただけだから。
「それなら俺も知ってるとよ。
 あんたも犬…かってるんだとよ?」
「エッ…?」
自分は寮暮らしであるから犬など飼ってるわけはない。
第一、寮内はペット類を部屋で飼うのは基本的に禁止である。
例外として爬虫類なら飼ってる人間はいるが。
「いや…飼ってはないが…。」
否定する渋沢に功刀の声が重なる。
「だったら俺も飼ってないとよ。」
暫く二人の間に沈黙が起こった。
その間に風に乗って聞こえたかすかな声。
「大型犬はうるさい。」
突然の功刀の台詞に一瞬びっくりするが、
渋沢も聞こえてきたかすかな声に薄く笑いを浮かべる。
どうやら話の意味が見えたらしい。
「そうかな?
 しっぽを振ってなついてくれて可愛いじゃないか。」
ああ。それでそんな噂が流れてるんだ。
二人して噂の真相を一気に発見する。
二人が話している犬とは動物ではなかった。
それは大きな声を上げてこちらに走ってくる。
距離が近づくとともに聞こえてくる声。










「かずさぁぁぁ〜ん。」










「きゃぁぁぁぁ〜ぷてぇん。」











叫びながら近づいてきた昭栄に軽くとびあがると、
近づいてくる勢いを利用してけりを叩き込む。
「じゃあかましいわ。昭栄。」
ぐえっと情けない声を出して昭栄は地面に倒れる。
「一さんいたいと…。」
けれどもそれはいつものスキンシップ。
と、周りには見られていた。
まさに生のどつき漫才である。
二人の様子を苦笑しながら見ていた渋沢は
一緒に近づいてきたもう一人の人物の様子がおかしい事に気づく。
「…どうした藤代?」
いつもならあちらと同じように「きゃぷてぇ〜ん。」と抱きつこうとしてくるはず。
が、今日は目の前で止まると「キャプテン」と言っただけである。
「だって…迷惑でしょ…。」
どうやら二人の様子と会話を見ていて考え込んでしまったらしい。
自分も昭栄を同じ行動をしていた。
もしかしたら…実はキャプテンもうるさいんじゃ…。
人の癖見てわが癖直せということわざが頭の中に浮かぶ。
むこうは…むこうの事情があり、
それがスキンシップになってる事などという考えは藤代の頭にはない。
うなだれる藤代の頭にポンと手を載せる。
「俺は、元気の無いお前の方が心配だよ。」
ふわりと笑いながら優しい声で言う。
…それだけで…素直になれた。
「きゃ…きゃぷてーん。」
ぎゅーっといつものように抱きつく誠二。
満面の笑顔で受け止める渋沢。
某猫DFがいたら毒舌がとんだだろうがここにはいなかった。
二人してラブらぶな世界に入った二人を昭栄と功刀は
片方は羨ましそうに片方は呆れて見て立ちつくしていた。
彼らには止めれるすべがなかったのである。
止めれるであろう某司令等様はここにはいない。
二人して、唯暫くボー然として眺めているだけだった…。



















後日











「犬のしつけって大変なんだぞ。馬鹿犬ほど可愛いって言うしな。
 飼い主には第一になつかせないと。」
と素敵な笑顔で功刀に言う渋沢がいたとかいないとか。

こちらのSSは元ネタ提供のYさんにささげます。
遅くなってごめんなさい…(汗)
渋沢は希望通り黒くしました。
もちろん、九州弁は造語交じりです(大汗)
犬二匹はめちゃくちゃ可愛いのですv
飼い主二人は…好きです。
背景が向日葵で季節外れなのは
犬二匹にぴったりな花だなぁとおもいまして。