気になるのはその瞳。
その表情。
まなざしの強さ。
…このメンバーの中ではきしゃな部類に入る体。
って、俺は欲求不満なのか?
心で自分自身にツッコミを入れる。
女に対する気持ちとは違うけど女に対する気持ち。
それって…恋?
んな。馬鹿な事あるか…。
+視線+ -side M-
ぶんぶんぶん。
頭を横に3回振る。
隣に居た辰巳が驚いてやがる。
「…悪ぃ…。」
「どうしたんだ?」
「いや、何でもねぇ。
FWとMFの連携でも練習するか?」
うーんと伸び一つ。
さっきまでの考えを否定する。
でも…視線がはずせないのは、
目立つ藤代と一緒に居るせいなだけではないはず…。
やば。
目…あったか…?
「さっきから変だぞ?」
「すまん。ちと休むわ。」
片手をあげて謝る。
ここら辺、寡黙なチームメイトは何も聞かない。
こういう時ばかりは感謝。
「なんだー。三上。もうダウンか?」
笑いながら近づくのは中西と根岸。
中西はMFで根岸はDF。
同じ一軍のチームメイト兼悪友と下僕。
「駄目だな〜。これくらいで疲れてちゃ。」
「お前らは何だよ。二人して。」
「ん〜。俺はねぎちゃんとお前をからかいに。」
多分、俺に対して軽口をたたくのはこいつと藤代。
それと近藤に渋沢くらいだろ。
そーいやー…こいつら付き合ってんのか?
なーんて噂も流れた事もあったんだよな。
もし、本当だとしたら…少しは参照に…。
って、ヲイ!!
何を考えた。俺。
「三上?」
再び頭を横に快速で振る三上に、
さすがに心配になったのか優しく声をかける。
はたから見てると突然意味不明な行動をする、
異常者にしか見えなかった。
そんなことは口が裂けても言えないが…。
「やっぱり。そう思うよね?」
小声で根岸は中西に聞く。
「しっ。それ言ったらまたいじめられるよ。」
余計なこと言ってどつかれるのは日常茶飯事。
彼と藤代が、三上の拳経験者のトップ2であった。
「…いや…別に。
ちょっと一人にしてくれや。」
どうやら小耳には挟まなかったらしい。
普段の三上らしくない様子に気おされたのか、
二人して背を向けるとグラウンドの中心にもどる。
「大方…女にでも浮気ばれたんじゃねーの?」
笑いながら言う中西の台詞は、今度は耳に届いたらしい。
中西の顔の真横を、綺麗にサッカーボールが抜けていく。
(どこにあったかは…秘密)
「さっすが司令塔様v」
狙いをはずしてくれてありがとう。
などと、よく分からないお礼をする。
ボールはそのまま二人の間をすり抜けると、
「痛ぁぁぁ〜。」
たまたまFW練習でグラウンドに
戻ってきていた藤代の頭にクリーンヒット。
「今のって、僕らじゃなくて藤代狙ってた?」
「さぁ?」
二人して顔を見合わせて首をかしげる。
とりあえずは…なんだか巻き込んでしまったようで
哀れな後輩に合掌。
ったく。
なんで藤代に向かって蹴ったんだ。
やっぱ…あいつと一緒に居たからだろうな…。
嫉妬?
まさか。
あっ、泣きついてやがる。
んな近づくなって。
本日二度目のボールが藤代の頭にクリーンヒットした。
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