雨の降った日は部活のサッカーは中止。
だから放課後は少し寂しい。
クラスが違うから…。
部活でしかあえないアノ人に会えないから。
雨は嫌い…。
雨
「ふー。休憩。」
んーと伸びをしながら将は草むらに座り込む。
まだ雨が小降りだった為、草が水を吸収していて湿っていたが
レインコートを着ていたので不快には感じなかった。
確かに、グランドを使う部活のサッカーは雨では出来ない。
けれども川原での自主練は出来ないわけじゃない。
頭に当たる雨は小降りで、逆にレインコートがない方がいいかも知れない。
かぶっているフードを取ろうとしたとき、頭の上に大きな水滴が落ちる。
だが、雨は酷くない。
不思議そうに振り向くと、そこに居たのは見知った姿。
「えっ?」
缶ジュース片手にいかにも『王子様』な風貌の少年。
「よっ。」
軽く将の頭に缶ジュースをぶつける。
「み…水野君!?」
同じサッカー部で自分の憧れの人。
ここで練習していることは彼は知っていて、
時々練習の相手にもなってくれる。
「何?俺が来たことってそんなに驚くこと?」
軽く笑いながら将に聞く。
端麗な顔の為、はたから見れば嫌味な印象を受けるが
将は全く嫌味な顔には見えなかった。
「えっ…だって雨だし…。
外に出ようとは思わないから…。」
「それを言うならこっちの台詞だろ?
雨降ってるから自主練なんてやってないだろーなって。」
そこでいったん区切る。
「でも、ンナ事ないだろうけどな。」
こうして来てみて正解だったぜ。
さっきとは違う笑みを浮かべながら水野は言う。
普段のクールな雰囲気からは想像できない笑い方。
学校や部活…選抜でもあまり見せない顔。
こういう顔を見せてくれるのは…僕だけになのかな…?
「あはは。」
あまりじっと見てると顔が赤くなりそうだから苦笑いで返事。
やっぱり彼にはかなわないや。
「今日はもういいのか?」
「うん。」
本当はまだしたかったけど。
水野君の表情が…終っていて欲しいって思ってるみたいだったから。
立とうとするとさり気に出される水野君の手。
こういうところ…女の子にはもてるんだろうな。
「よかったら家来ないか?母さんがたまには遊びに来いって言ってるし。」
半分嘘で半分真実。
半分の嘘は君を家に呼びたい自分のわがまま。
「でも…。」
「大丈夫だって。そんな遠慮するな。
母さん達だって、いつでも歓迎するって言ってくれてるんだから。」
すみません。
母さん利用させていただきました。
「じゃあ…お言葉に甘えようかな…。」
にこっと笑って将は言う。
簡単に男女問わず魅了してしまう笑顔。
もちろん水野もダメージを受けた一人である。
可愛いと叫びたい心を理性で抑えて何事もなく振舞う。
「よし。行くか。」
「うん。」
二人一緒に川原を後にする。
さり気に繋いだままの手と手。
少しづつ強くなっていく雨。
こんな日はおいしい紅茶を入れて二人で話そう。
秘密の幸せな時間。
この時間がたくさん持てるなら…雨の日もいいかな。
なんて考えるのは不謹慎?
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