きらきらきら。
零れ落ちるのは無数のお星様。
カラフルで色とりどりだけど。










砂糖菓子










机の上においてある袋を見ながら、
三上は綺麗な顔を嫌そうに染める。

机の上にはひとつの袋。
入っているのは色とりどりな小さいお星様。

「どうしてこんなものが?
 もしかしてキャプテンのですか?」
だとしたら…珍しいですね。
猫のような目をにっこりと細めながら笠井は言う。

「あいつのじゃ…ない。」
今は、別室に居る同室の人間の性格を知っているからこそ断言できる。
と、いうより自分が持ってきたものだから。

彼が行ったと入れかわる形で笠井が遊びに来ていた。
普段は笠井の同室がこっちの部屋に来るのだが、
今回はなぜか反対だった。

外から帰ってきた三上を待っていたのが笠井だったことに
驚いて動揺して慌てたのはプライド上秘密である。

そして、部屋に戻ってきた自分を待ってたもう一つのもの。
机の上の袋。

どうやら話を聞く限り笠井が持ってきたわけではないらしい。
彼が来る前からこの部屋にあったという。
そりゃそうだ。持ってきたのは自分なのだから。

「じゃあ…何で?
 三上先輩は甘いもの嫌いでしたよね?」
不思議そうにクビをかしげる笠井を一瞥すると、
隣に座り込む。
そのままおもむろに机の袋を取る。
「欲しいか?」
「えっ?」
一瞬質問の意味がわからなかったが理解するとクビを縦に振る。
もしかして…口移しとかでもらえるのかな?
などと期待も少しはしたが、
甘いもの嫌いな彼が口にすることはない代物だったので諦めた。
もちろん予想通り、手に持たされただけだったが。
「あ…ありがとうございます。」
手の中に納まった袋。












今すぐ引きちぎって目の前で捨ててやりたい。












そんな気持ちで受け取ったとしたら怒るかな…?












「それさ…。」
視線を少しそらして話し始める癖は、言いにくいことを言う時。
何を言いたいかわかる。
「言わなくていいですよ。これ…ですよね?」
そっとポケットから取り出す手紙。
小さな封筒には可愛らしい字で「三上さんへ」と。
袋にくっついていたもの。
「知ってて聞いたのか?」
「ちょっと…三上先輩の口から聞いてみたくて。」
でも…やっぱり嫌だった見たいデス。
はははと笑いながら笠井は言う。
「甘いもの嫌いな先輩に甘いものなんて…。
 この子先輩の事全くわかってませんね。」
相手が好きなら少しは相手の好みを知っていてもいいのに。
少し怒ったように笠井は言うが三上の返事は空返事である。








…他に何か隠してる?








勘の鋭い笠井はすぐにわかってしまった。
それだけ、三上が表情や態度に出すぎというのもあるのだが…。
「で?他にいいたいことあるようですけど?」
「えっ…。」
じーっと笠井に睨まれて、三上の視線はますます行き場をなくす。
こうなったら根比べ。
吐き出すまで一生こうしててやるという笠井の気迫を感じたのか
降参と両手を上に上げるとにやりと笑う。
俗にいうデビスマ。
けれど、追い詰めてるのは自分なのにその余裕は何なのか?
「そんなに聞きたい?」
なんだか聞きたくなくなったが後には引けない。
こういうところ…天邪鬼だなと思う。
「ええ。聞きたいデス。」
「俺さ…少し前に聞かれちゃったんだよね。独り言。」
「へぇ?どんなです?」









口調は攻めてるけど心ではパニクってます。
聞きたくねぇと第六感が告げてます。









「…俺、最近甘い者が大好きなんだって。な。」
近寄られて少しだけ座ってることも忘れて後ずさり。
「あ…甘い物じゃなくて者なんですか?」
「そう。物じゃなくて者。」
にっこりと至近距離でのスマイル。
デビスマよりももっと恐ろしかった。
「そ…そうなんですか…よ…よかったですね。」
すでに自分の思考回路も支離滅裂。
「で?俺としては『甘い物』よりも『甘い者』を食べたいんだけど?」
「………。」
やばい。いろんな意味で危険だ。
ふと、目に付いたのは自分の手の中。
幸い三上の目線は自分に集中している。
手元までは見ていない。
「…仕方ないですね…。」
ふうとため息一つ。
目をつぶって近づいてきた口に袋の中身を一粒。
…だけじゃなくて一気に三粒ほどぶち込む。
「ぐはっ…。お前…。」
一気に離される体と体。
三上の目には半分涙までたまっている。
「俺は『甘い物』が好きなんです。」
「てめぇ…渋沢に連絡して明日まで帰ってくるなって言ってやる…。」
ぽつりとつぶやかれた台詞によって運命は決まってしまった。














結局こうなるのか…。














今度はコンデンスミルク入れたお風呂にでもつかってやろうかな…。
その後、体中に砂糖をまぶして。
お望みどおり『甘い者』として。


砂糖菓子≒こんぺいとうでイメージし、
基本的(?)な三笠風味にしてみました。
怒る笠井君と困る三上さん。
オチは天邪鬼でちょっと後悔笠井君とデビスマ三上さん。
しかも題名どおり甘いですな。
ちなみに『物』と『者』の違いは『物=物体・物質・物品』で『者=人』って
考えてくれればいいデス。
実は『物と者』ネタは自分のオリジナルストーリーの一つから拝借v
設定とキャラと第一章までで終ってるけど(汗)