少しショック。
はぁ〜。
出るのはため息ばかり…
「ど…どうしたの?」
「ん〜ん。なんでも。」
はぁ〜。
出るのはため息ばかり。
+秘密の言葉+
視線シリーズ
机の前からため息ばかりで微動たりとも動こうとしない
笠井を見ながら藤代もこっそりため息をつく。
原因は判ってる。
自分の不用意な発言によって導かれた三上の台詞。
「なんで男になんて手を出さないといけないんだ。」
普通の当たり前な台詞。
だが、そのどんな意味をとっても
笠井を悩ます台詞となった。
最初から判っていた事。
そういう噂だってたくさん聞いている。
だから、見てるだけでよかったのに。
それさえも拒絶された気分がする。
「タク…。」
心配そうに声をかけるが笠井は気づかない。
「あ〜もうどうしろっていうんだ!!」
藤代は両手で自分の頭を抑えると首を左右に忙しく振る。
これ以上傷をおった親友の姿は見ていられなかった。
自分が、どんな行動をしても立ち直らせるのは難しいだろう。
「はぁ〜。」
「はぁ〜。」
同時にため息をつく。
そして、それは別室でも同時におこっていた。
こちらも同室者が困った表情で、
ため息の主を見つめていた。
さっきから繰り返されるのはため息ばかり。
話し掛けても「ああ…。」などのおなさけな返事しか返ってこない。
「どうしたんだ…三上…。」
困ったように渋沢はもう一度問い掛けるが、
今度は聞こえていないのか返事は無い。
「なぁ…。」
暫くたってから三上のほうから話し掛ける。
「何だ?」
「人を傷つけてしまったらと思ったらどうすればいい?」
あの時の顔と表情が忘れられない。
一体俺が何を言った?
だが、傷つけたのは俺の台詞だって事はわかる。
「何だ。そんな事で悩んでたのか?」
「そんな事って?!」
自分にとっては死活問題なことを、
簡単だといわんばかりに言われて三上は声をとがらせる。
「…第一そんなの簡単だろ。
謝るんだ。ごめんなさいって。」
まるで小さい子に聞かせるような口調で渋沢は言う。
「それだけで自分の誠意は伝わるもんだぞ。」
「………。」
ガタンと大きな音を立ててイスから立ち上がると、
無言で部屋を出て行く。
それを優しい目で見送ると、騒がしい来訪者の為に
こっそり買っておいた彼の大好物を用意しておく。
「タクが幸せすぎて不気味で怖いんですぅ〜。
三上先輩も来たと思ったら「ごめんな」って一言だけ言って
さっさとどこかにいっちゃうし。
あんな照れ顔の三上先輩も怖いですぅ。」
叫びながらノックもなしに、彼が入ってきたのは数分後の事。
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