あいつを説得できなかった。
自由の獲物
正義と自由シリーズ
オーブの防衛線が終わり、怪我が悪化してベットに逆戻り。
それでもあの時、一瞬でも止まってくれたあいつ。
泣きそうな顔して信じられないって表情で俺のことを見ていた。
もう少し力と時間があったら救ってやれたかも知れないのに・・・。
無理矢理ベットに突っ込まれて布団を被って考えるのはあいつのことばかり。
もしかしたら自分の説得で、もっと混乱させてしまったのかもしれない。
だけど生きてると伝えれた。
お前を心配してるとも。
それだけで少しは希望を持っていてくれるといいと思うのは自分のエゴか。
瞳を閉じればおもいだすは赤い目だけ。
ふと感じた顔にかかる影に、瞳をあけると見えるのは紫の目だけ。
・・・・・・ん?
ぱちくりと瞬きを数回する自分を不思議そうに見てるは幼馴染。
何時の間に。。。という声にならない台詞が聞こえたのか彼はにっこり笑って言う。
「さっきから、居たけどね。
君、百面相とかしてて面白かったけどさ。」
つまり気配を消してたと・・・
「いやだなぁ。そこまで軍人みたいなプロじゃないよ。僕は。
話したいことがあったから。」
「話・・・?」
「うん。あのMSを操ってたパイロットのこと。」
少しだけ言いにくそうにキラは言う。
ああ。そうだ。
キラはシンに撃たれたんだ。
「シンの事か・・・。
そうだな・・・自分を撃破したパイロットのことだし知りたいよな」
まだ多少傷が痛むがゆっくり起き上がる。
「あいつは本当は心優しい奴なんだ。
お前を撃ったのも・・・理由があって・・・。」
なるべく刺激しないように話し始めるが、キラからは何の反応もない。
「キラ?」
「ああ、うん。ごめん。
シンってあの青い機体に乗ってた子だよね?君と会話してた。」
「そうだが・・・?」
こいつは何が聞きたいんだ。
「違う。違う。僕が聞きたいのは、金髪の方の子。」
「レイのことか・・・?」
先ほどの戦闘に出撃してたMSに乗っていた人物で
キラが知らない金髪の人間ははレイ以外は特に思い浮かばない。
「レイって言うんだ・・・何か、あの容姿に似合わずクールな子だったよね。」
「ああ。レイは何を考えているかわからないことも多かったからな・・・。」
思い出すミネルバでの日々。
あまり思い出したくないのは、あいつの顔が泣いてるから。
どんなシーンでも泣き顔になってしまう優しいあいつ。
「そうなんだ。確かに、どれ見ても無表情だしね。」
「レイは感情を表に出さないからな・・・。」
そう答えてから気づく。
なんで、こいつはレイの容姿を知っているんだ。
MS越しに声は聞いたとしても容姿まで判るはずがない。
そんな疑問に気づいたのか、キラは0円スマイルを浮かべてあっさりと答えを言う。
「ん?ハッキング☆」
だから☆マークはつけるな。
「あと、アスランの軍服にあったフラッシュメモリも見ちゃった☆」
だから☆は・・・って。
「おま・・・勝手に。」
「だってザフト軍の秘密情報とかかなぁって思ったんだもん。
そしたら普通のスナップ写真とかばっかで・・・。」
「大切な思い出だからな。」
それだけは置いてはこれなかった。
ミネルバに居たという事実が消えてしまいそうで。
「あっ、ちなみに隠しフォルダにあったいかにも隠し撮りっていう写真類に
たくさん写ってる黒髪の子がシン君なんでしょ?」
悪気もなく爆弾発言。
何で知ってる?と聞いても、
返ってくる答えはすでに判ってるので、精神衛生上のためにも聞かないことにする。
「・・・。」
「あれ?何で知ってるとか聞かないの?
慌てたりもしないし普通の反応なんてつまんない。」
「慣れたんだよ・・・。」
ため息と同時に一言。
それでも不服なキラは、まだ何かぶつぶつ言っている。
・・・第一、好きで慣れたわけじゃないし慣れたくもない。
「で、話を戻すが何でレイのことを聞きたがるんだ?」
「えっ、一目ぼれだからvv」
「なるほど・・・って、おい。」
納得するな自分。
「何、なんか文句有るの??
あーもしかして、もう君が唾つけたとか??
シン君って言う可愛い恋人が居るのに。」
「違う。
それにシンとは・・・。」
恋人、に当てはめていいのだろうか?
と思ってしまう自分を情けなく思いつつもこれ以上キラに問い詰められたくないので黙ることにする。
「何?何?シン君とは・・・?」
「なんでもない。
それより、レイのことだろ?」
とりあえずは自分の知ってる範囲での事を教えてやる。
半分はシンからの情報も混ざっているが。
「ふむふむ。そっかそっか。」
と、一人で納得したのか理解したのかうんうんとキラはうなずく。
「ありがとう。まぁ、用事はそれだけだから。」
怪我をしてる自分を見ても心配の声も何もないキラは、
本当に用事はそれだけだったらしい。
そして、扉に手を掛けて出て行こうとする前に振り向いて一言。
「次の戦闘では僕の邪魔しないでね。
レイを捕獲するのは僕だから、ちゃんとシン君を抑えててね。」
言い切ると、今度こそ部屋を出て行く。
ぶっそうな言葉だが、キラならやりかねない。
てか、出来ると断言できる。
そっと遠く離れたレイに十字を切るともう一度布団に倒れる。
やっと訪れた平穏な時間。
目を閉じて赤い瞳を思い出して眠りにつく。
存外、いろんな意味で体力は消耗したらしい。
会いたいな・・・
「どうした?シン。」
「なんでもない。」
ベットに寝転がって視線は天井に向いてる筈だが、どこか遠くを見てる目。
あのオーブでの戦闘がシンを惑わせた。
このままではギルの計画が駄目になる。
そう思い声を掛けようとしたレイの背筋に走る冷たい汗。
なぜか体が震えている。
急に変わった親友の変化にシンは視線を戻すとおそるおそる声をかける。
「レイ・・・?」
悪寒が事実になるのは数ヶ月のこと。
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