いつもの公園。
時々、一人でくつろぐことがあるのだが今日はいつもと違っていた。
公園の周りにあふれる薔薇。薔薇。薔薇。
色とりどりの薔薇が公園にあふれかえり、同じくらいの人間もあふれていた。
自分一人ならこんなところになんて絶対近寄らない。
だが…今日は相手が悪かった。
暇だよな?と、突然潜伏先に訪れて腕を掴まれるとそのまま連れてこられたのだ。
「なんだ…これは?」
自分の見た光景に説明を隣の男に求めると、男は楽しそうに答える。
「ん?移動薔薇園ってらしいぜ。
それにしても綺麗だよな〜。」
そういいながら人の中へと埋もれていく。
別に自分は潜伏先に戻ってもいいのだが、なぜかそうする事が出来ず男の後をついていく。
手をしっかり握られていたのも理由の一つだったのだが…。
Blue Rose
移動式ながらもバラ園と名乗ってるだけはあり、色とりどりの薔薇が咲いていた。
赤や白や黄色などの基本色から、基本色が淡くなったり濃くなったりの派生色。
同じ色でも形もさまざまであった。
普段見ることないので珍しさに一つ一つじっくり見ていると、ふいに隣の男が居ない事に気づく。
さっきまで偉そうに説明をしていたのだが声がなくなったのに気づかなかったらしい。
そこまで集中して薔薇を見てたのかと自分を振り返りつつ男を捜そうとしたとき自分の名前を呼ぶ声がする。
「刹那〜こっち。こっち」
しかも大声。プラス手を振るのオプションつきで。
そんな行動を、茶色いやわらかい髪と緑の瞳と白い肌をもった背の高い美丈夫がやってるものだから嫌でも人目をひいた。
周りの女の子の「刹那って誰かな?彼女かな?」とかひそひそ声も聞こえ、刹那はますます表情を怪訝にさせる。
無視するのは簡単だがそれを実行すると後からうっとおしいのはあきらかなので、不機嫌を隠そうともせず刹那は彼に近づく。
「なんのようだ。」
「ほら、ほら。これこれ。」
近づいた刹那に嬉しそうに笑うと一つの薔薇を指で指す。
そこに咲いていたのは青い薔薇。
正確には青紫に近い色の薔薇である。
「珍しいだろ。」
「ああ。」
二人して青い薔薇を見る。
珍しい薔薇に周りの人も同じように立ち止まって眺めていた。
青だけど青じゃない。
それは遺伝子組み換えで作られた物であり、純粋な青色にはなっていない。
その後、薔薇園を一通り回って、薔薇のアイスも食べて満足した二人は帰路についていた。
もうすぐ夕日も沈もうとしている。
強い赤とゆっくり訪れようとしている闇の中、ロックンはポツリとつぶやく。
「まるでお前とエクシア…だな。」
「えっ。」
小さな声だったが隣に歩いていた刹那には十分に音を拾えた。
「青い薔薇。青だけど純粋な青じゃない。
まだまだ実験途中で、純粋な青になろうとしてる…。」
「俺は、そんな綺麗なものに例えられるほどの人間ではない。」
「そっか。」
さり気にロックオンは刹那の手を握り締める。
「でも、知ってるか?青い薔薇の花言葉。」
昔は「不可能・有り得ない」でだったんだけど、実現させた事から「奇跡・神の祝福」って意味なんだぜ。
「ますます俺には似合わない…。」
「でも、不可能を奇跡に変えるのは俺らだろ。」
ぱちんとウインク付でロックオンは返事を返す。
「だったらあんたにもティエリアにもアレルヤにもあてはまる。」
「…まぁ、そうだけど青はお前の色だろ?」
だけど…とロックオンは言葉をつむぎながらつないだ手を引き寄せると刹那の耳元でささやく。
「俺は、せっちゃんに贈るなら赤い薔薇。それも紅色で…かな。」
「…だったら、俺はロックオンに中輪の黄色いバラを贈ってやる。」
刹那の台詞にロックオンは一瞬固まっておもわずつないでた手を話してしまう。
その隙に刹那はとっとと先に歩き出していた。
台詞だけはきついが髪の隙間からのぞく耳が赤いことに気づくとただの照れ隠しだろう。
毎度のことだしそんな刹那が可愛らしいロックオンは急いで彼を追いかける。
追いついて後ろからぎゅっと抱きしめると、存外刹那からの抵抗はない。
のぞいてみた顔は予想通り真っ赤で可愛らしくて。
だから、思わず言った本心。
「本当は黒い薔薇を贈りたいんだぜ。」
それはそれは薔薇のとげのように刹那に浸透していった。
甘く残酷に、縛り付けるように。
-END-
以下おまけ。
今回の話での薔薇の花言葉の意味。
(実際、花言葉はさまざまですのでこのSS内での意味となります)
青い薔薇:本文中で
赤い薔薇:情熱、愛情・あなたを愛します
↑で紅色:死ぬほど恋いこがれています
黄色い薔薇(中輪):あなたには誠意がありません
黒い薔薇:あなたは私だけのもの
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