「よっ。兄さん、久しぶり。」
帰ってきて早々に客間に通されて、そこのソファに座っていたのは瓜二つの人物。
その人物は軽く片手を挙げると気楽な挨拶をする。
「ライルか。何のようだ?」
少々面倒くさそうに返すと、ロックオンも向かい合わせにあるソファに座る。
彼は双子の弟であり、アレルヤとは違う自分の秘書でもあった。
どちらかといえば裏業務を担当している。
「聞いたぜ。最近、可愛らしい細君を軟禁してるって。」
「…酷い言い方だな。」
ライルの言い分に、ロックオンは顔をしかめる。
「だって家の人間にしか会わせてないんだろ?
しかも外にも出さないし。
当たり前な意見だと俺は思うけどな。」
その言葉に反論が思い浮かばず苦笑いで返す事しか出来なかった。
そのとき、タイミングを見計らってか執事がコーヒーを運んでくる。
セミロングの紫の髪と白い肌。
中世的な雰囲気で女と間違えられそうだが、
彼は男であり刹那の世話係を務めるほど信頼されている人物だった。
「サンキュー。ティエリア。
お前さんも刹那の事は秘密なわけ?」
「さぁ。それはご本人の口から直接お聞きになってください。」
ライルの軽口をすっぱり切るとコーヒーをそれぞれの前に置く。
それが終わると自分の仕事は以上とばかり、礼をして部屋から出て行った。
「ちぇ。逃げられたか。
んで?それって俺にも秘密なの??」
突然訪れた理由がこれかと、ロックオンはコーヒーを飲みつつ心の中で思う。
普段は裏で動くことが多い彼が、表で堂々と会いに来ることは滅多にあるかないかであった。
「そうだな。いつかは、お前の義姉だしな。」
ロックオンはコーヒーを一口飲んだ後、真面目な顔になるとライルと向き合う。
「気が早いって。」
と、ひらひらと手を振って笑ってたライルは変わった雰囲気に自分も真面目な顔に変わる。
「なぁ。『深紅の姫君』って覚えてるか?」
「ん?ああ。兄さんが子供の頃に言ってた子供のことだろ。
綺麗な目に一目ぼれして忘れられないって。
でも、確かあの子は・・・。」 
続けようとしたライルの台詞をさえぎってロックオンはゆっくりと言う。
「見つけたんだよ。その姫君をな…。」
「えっ…」
たった一言。
だが、それだけでライルのカップを持つ手が宙で止まる。
「そういうことだ。」
そんな反応も予想済みだったのだろう。
全く気にせずにロックオンはコーヒーを飲み干す。













「兄さん。。。あんたは何を考えているんだ。。。」

ぼそりとつぶやいたライルの台詞は自分の口をふさいだ手によってさえぎられ、ロックオンに届くことは無かった。