大きなビル。
ここら辺では珍しい最新型の建物は、外見とあいまって無機質に街中に君臨していた。


その最上階では一帯を見渡せるであろう窓を背に、一人の男が仕事をしていた。
大き目の机に積まれてるのは山のような書類。
一心不乱に処理していく男に声をかける者が居た。

「聞きましたよ。面白いものを拾ったそうですね。」

そういって問いかけるは、長い前髪で片目を隠した男だった。
がっちりと筋肉のついた体と高い身長は一見恐ろしさを思わせるが、
その瞳は外見に似合わず穏やかな光を持っていた。

「ああ。」

机の書類を片付けながらロックオンは片手間に軽い返事をする。
それ以上言うことはないのか、黙々と手を動かし続けて次の語を発する気配はなかった。
彼の回りに対する態度はいつものことなので、問いかけた男は軽く苦笑いを浮かべると会話を続ける。

「しかも自分の屋敷に軟禁してるって。
 珍しいですね。あなたがあの日以来、こんなにも人にかかわるなんて。」

あの日以来といわれた瞬間に、ロックオンの顔が険しくなる。
普段の無表情に加わった静かな怒りの表情。
が、それも一瞬の事ですぐに元の無表情へと戻る。
ちょっと言い過ぎたかなって表情で男は口元を手で抑えるが、すでに彼の怒りを買ってしまったらしい。

「黙って仕事をしろ。アレルヤ。
 こっちの分も、すべてお前がやれ。」

指差されてたのは山になった書類類。
机の上に見事なバランスをとってつまれている。
それを見て、軽くため息をつきながらも書類を片付けようと何枚かを手に取る。
同じように机に向かい書類を処理しながらアレルヤは独り言のように話を続ける。

「でもね、嬉しいんですよ。
 他人に関心を持つようになってくれたあなたが…。
 きっと可愛い子なんでしょうね。」

「………。」

その問いには彼からの答えはなかった。
でも、それでもいい。
と、アレルヤは思った。
大事なのは彼が変わったと言う事だから。





その証拠に彼の表情が少しだけ緩んでいたから。


これは…見なかったふりをして黙っていたほうがいいんだよね。
ハレルヤ。