きっかけは些細な一言。
「眼鏡って知的にも陰険にもみえますよね。」
そんな台詞。
1.眼鏡
視力がかなり悪いわけではない。
普段の生活になら、眼鏡は必要ないから。
勉強や読書など、細かい作業時のみの着用である。
だからこそ、拝見できる確立はかなり低い。
「幻の三上先輩ですね。」
突然言い出した恋人の台詞に、
机に向かって作業していた三上は手を止める。
なぜ、突然そんな事を言い出したのか理由を求めるべく、
怪訝そうに一応顔だけは振り向く。
「何が?俺は幻でもなんでもないぜ。」
「いえ、眼鏡を着用している姿の事ですよ。」
ああ。
なるほど。
「まぁ、普段はめったにつけないからな。
それが何で幻になるんだ?」
「だって、普段の三上先輩のイメージが変わるから。」
「変わるって。
じゃあ、お前はどういう風に見えてるわけだ?」
「え〜陰険さが倍増かなぁ。」
明るく面白そうに笠井は言う。
「ヲイ。」
こつんと軽く手元の本で一撃。
「痛て。何ですか?
俺は正直に述べただけですよ。」
「笑いながらか?」
いつのまにか三上は机から離れると、
笠井の目の前に座り込んでいた。
「で?」
自信たっぷりに笑って
今度は自分の手で軽く笠井をどつく。
そのまま髪をそっとなでと
顔を自分に向かせる。
「本当の所は?」
からかうようにそれでも優しく三上は聞く。
「………
知的で格好いいです…。」
ポツリと言った笠井だが
この距離では簡単に三上の耳に入った。
「…ごーかくv」
そういうと笠井の額に軽くキスをする。
「普段よりドキドキします…。」
「じゃあ今日はこのまま最後まで…。」
台詞がいい終わらないうちに、
三上のあごにアッパーがヒットする。
「それとこれとは別です。」
「つ…冷たい…。」
調子に乗った三上にはかなりのダメージだったらしい。
これ以上怒らすと後が恐いので、
おとなしく机にもう一度向かう。
その姿を見ながら笠井は心の中で静かにつぶやく。
…だから、言いたくなかったのにな…
かっこいいって言うと調子に乗るから。
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